小松左京の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作5選

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日本SF小説の第一人者、小松左京。「日本沈没」や「果しなき流れの果に」など、小松左京が生み出す奇想天外で壮大な物語は、20世紀における日本SFの頂点と評されています。また作家以外にも、イベントプロデュースやラジオパーソナリティ、映画制作など多方面で活躍し、晩年には小松左京賞も設立されました。80年に及ぶ生涯で、数々の作品を執筆した小松左京の作品にはどのようなものがあるのでしょうか。この記事では、小松左京の作品の特徴やおすすめ代表作を紹介します。

小松左京の作品の特徴及び評価について

「日本沈没」の印象により、長編小説作家のイメージがある小松作品ですが、星新一などと同じくショート・ショート作品も多く残しています。その作風は本格SFからタイムトラベル物、パラレルワールド物、SF児童文学やホラー、ファンタジーなど執筆ジャンルが幅広く、SF作家という定義では収まりきれないところがあります。

小松左京の執筆ジャンルの広さは、病弱ながらも歌や音楽、映画や歌舞伎に夢中になった少年時代の経験が活かされているのは言うまでもありません。また、小松作品の大きなテーマとしては「アイデンティの確立」が挙げられます。私たち人間は「何を支えとして日々生活しているのか」、または「日本人とは何なのか」といった重要な問題が、作品を通して語られているのも小松作品の特徴と言えるでしょう。

「日本沈没」や「首都消滅」が大ベストセラーとなったのは、もちろん作品が面白いというのが一番の理由ですが、上記のような「小松左京の哲学」を知った上で作品を読むと、別の角度から作品を楽しめると思います。小松左京の作品は幾度も映画化や漫画となり、存命中から高い評価を受けていましたが、小松左京が本当に評価されるのは、もしかしたらこれからなのかもしれません。

小松左京のおすすめ代表作

小松左京のおすすめ作品を5つ紹介します。必ずしも代表するものではないかもしれませんが、読む価値アリなのでぜひ読んでみてください。

日本沈没

1973年に刊行された小松左京をもっとも代表する作品です。1964年から9年の歳月をかけて執筆されました。発売前は「SF小説として長すぎる」と言われましたが、日本が沈没するという奇想天外な発想と、ハラハラとした緊張感のある展開が話題となり、最終的に累計発行部数385万部の大ベストセラーとなりました。この小説により、日本におけるSF小説というジャンルが広く一般に認知されたといっても過言ではないでしょう。

この作品で小松左京は、第27回日本推理作家協会賞、第5回星雲賞を受賞しています。また「日本沈没」はプレートテクトニクス理論を元にしたSF小説であると同時に、「祖国を失う運命にある日本人のアイデンティティを問う」という重要なテーマが含まれています。
複数の映画化の他、筒井康隆の「日本以外全部沈没」というパロディ作品もあるので、併せて読んでみると楽しいかもしれません。

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果しなき流れの果に

1965年、雑誌「S-Fマガジン」2月号から11月号に掲載された長編小説です。中生代から未来にかけた10億年に及ぶ「果てしない」期間を舞台にした作品です。小松左京の長編小説としては4作目であり、SFファンの間では小松作品における最高傑作として位置付ける人もいます。

舞台は大阪。大阪のとある古代の古墳から「謎の砂時計」が発見されることから物語は始まります。発見された不思議な砂時計からは無限に砂が流れ続け、主人公の理論物理学者・野々村は砂時計の謎を解明するため、発見された古墳へと調査に赴きます。しかし調査を終え古墳から戻ると、野々村をはじめ、関係者が次々と死亡、失踪してしまいます。いったいこの砂時計はなんなのか、そして突然消えた野々村の行方は・・・。

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くだんのはは

SF作家として知られる小松左京ですが、ホラー作品(怪談に近い)も多く執筆しています。「くだん」とは漢字で「件」と書き、体が牛で顔が人間の妖怪です。災いが訪れる前に人々の前に現れ、予言を伝えると言われています(確かに「件」という漢字は、にんべんに牛ですね)。1968年「詩の特集」1月号に掲載された作品で、「小松左京のもっとも恐ろしいホラー」と評されています。

阪神間大震災により住む家を失った良夫。路頭に迷う良夫の前に、かつて家政婦をしていたお咲が手を差し伸べます。お咲が住み込みで働く屋敷を紹介され安堵する良夫でしたが、次第にその屋敷の奇妙さに気づき始めます。良夫が目撃した、屋敷に隠された恐ろしい秘密とは一体なんだったのでしょうか。

漫画家・石ノ森章太郎をはじめ、3度漫画化され、漫画の神様・手塚治虫が「小松さんの傑作のひとつ」と賞賛しました。

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空中都市008

小松左京が書いたSF児童文学です。「アオゾラ市のものがたり」という副題が付けられています。1968年、雑誌「月刊PTA」で連載が始まり、NHKの人形劇番組でも放送されました。もしかしたら、見た記憶がある方もいるのではないでしょうか。

舞台は21世紀。科学技術が発達した未来が描かれています。およそ半世紀前に書かれた作品のため、登場する科学技術は実現不可能なものも多く含まれていますが、人間の想像力のたくましさに驚かされます。ちなみに、タイトルの「008」は国際ダイヤル通話における「日本」の識別番号から採用されています(現在は81)。読むと童心に戻れる、微笑ましい作品です。

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首都消失

1983年12月から翌1984年12月にかけて、北海道新聞、中日新聞、西日本新聞に合同連載されたSF小説です。この作品で小松左京は第6回日本SF大賞を受賞し、1987年には映画化されています。単行本上・下巻で150万部を売り上げ、「日本沈没」に次ぐ大ベストセラーとなりました。

東京を中心に突如現れた巨大な雲。雲の出現により交通・通信・電波が遮断され、都市機能がマヒしてしまいます。さらに、事に乗じたアメリカやソ連の政治的思惑が入り混じり日本は危機的状況に陥ります。突如現れた雲の正体は何なのか、そして日本の運命は・・・。

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まとめ

今回は、数ある小松作品の中から5つ紹介しました。SF作品からホラー小説、子供向け作品まで執筆した小松左京ですが、どの作品においてもその知識量と想像力には舌を巻いてしまいますね。長編小説は読むのに躊躇してしまうかもしれませんが、読み始めるとその面白さに、あっという間に読了してしまうことでしょう。まだ小松作品を読んだことのない方はもちろんのこと、読んだことのある方も、いまいちど小松ワールドを味わってみてはいかがでしょうか。

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>>小松左京ってどんな人?その生涯や家族は?性格を物語るエピソードや死因は?

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