半村良の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作6選

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SF作家であると同時に、人情作品を多く残した半村良。自身を「嘘屋」と呼ぶほどに奇抜で大胆な発想で描かれた作品は、令和の時代になった今でも読者の心を捉えて離しません。
「産霊山秘録」で泉鏡花賞、そして「雨やどり」では直木賞を受賞した昭和を代表するSF作家半村良の作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は半村良の作品の特徴やおすすめ代表作をご紹介します。

半村良の作品の特徴及び評価について

半村良は科学と文学を単純に融合させるだけのSF作品にとどまらず、「戦国自衛隊」のような作品において、架空戦記という新しい分野を生み出しました。架空戦記とは「もしも〜だったらどうなるだろうか」という、誰しもが持つ想像力や好奇心をSFという分野で表現したものです。また、歴史やオカルトを大胆にSFに取り入れた作風は、ジャンルの垣根を超えて読者を半村ワールドに誘い込みます。

奇想天外なSF作品を書いた一方で、今回紹介する「雨やどり」といった人情味溢れる作品を多く残している点も半村作品の特徴です。人々の心情を描いた作品は、半村の人生経験が強く反映されており、そこで描かれる人々の心の内側がありありと伝わってきます。これらの作品を読むことで、昭和という時代がどのような時代だったのか、今となっては古き良き時代を味わえます。

斬新な発想で読者を魅了した半村は、第1回泉鏡花賞の受賞をはじめ、さまざまな賞を受賞し、現在でも多くのSFファンから愛されています。

おすすめ代表作6選

半村良のおすすめ作品をご紹介します。今回はSF作品を中心にまとめてみました。どの作品も壮大なスケールの物語ですので、きっと新たな読書体験ができると思いますよ。

産霊山秘録(むすびのやま・ひろく)

1973年に出版され、第1回泉鏡花賞を受賞した半村良の代表作です。天皇よりも神聖な存在として古(いにしえ)より歴史の影に潜む<ヒ>一族。特殊な能力と三種の神器を用いて、歴史の重要局面で姿を現します。舞台は室町時代末期から昭和の戦後までの400年間という、壮大なスケールで描かれています。古事記を題材にした歴史小説とSFが融合した日本のSF作品における傑作の1つとされています。

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戦国自衛隊

1971年に雑誌「SFマガジン」に連載された中編小説です。この作品により、半村良は架空戦記の元祖と評されるようになりました。日本のSF小説の金字塔であり、2度にわたり映画化されています。

ある日、自衛隊が日本海沿岸で大演習しているさなかに巨大地震が発生します。巨大地震に巻き込まれた伊庭義明(いば・よしあき)3等陸曹率いる一団は、気づくと戦国時代にタイムスリップしていました。伊庭率いる一団は戦国時代の武将・長尾景虎を名乗る人物と出会い、天下統一に向けて合戦に明け暮れる日々を送りますが、やがて伊庭は自分達の知っている歴史と異なる歴史にいることに気づきます・・・。

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太陽の世界

1980年から雑誌「野性時代」に掲載された歴史ファンタジー小説です。全80巻の刊行が予定されていましたが、1989年の18巻で中断されています。また、2002年に半村が他界したため、作品は未完となりました。伝説の大陸・ムー大陸の2000年を描く長大ファンタジーで、平和を愛する民「アム」が故郷を追われるところから物語は始まります。

この作品に感銘を受けた作家栗本薫は、半村が予定していた全80巻を超えるべく「グイン・サーガ」100巻を目指したそうです(栗本薫は亡くなってしまいましたが、現在147巻まで刊行されています)。事実はわかりませんが、半村は全80巻分の印税を一括で受け取ったと言われています。

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石の血脈

「戦国自衛隊」と同年の1971年に刊行されたSF伝奇小説です。この作品で半村は、優れたSF作品に贈られる第3回星雲賞を受賞しています。吸血鬼伝説や狼男、巨岩信仰などオカルト要素が満載で、まさに半村の技量の真骨頂と言える作品です。歴史やサスペンスがお好きな方にとくにおすすめします。

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妖星伝

1973年、雑誌「小説CLUB」9月号から連載され、中断の後、1993年に全7巻で完結した作品です。太古の昔から歴史の闇で暗躍していた「鬼道衆」が、超能力を使い安寧の世界の転覆を企むところから物語が始まります。歴史・科学・思想などの膨大な知識が盛り込まれた、半村良渾身の作品です。

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雨やどり

1975年に第72回直木賞を受賞した半村良の人情作品を代表する作品です。舞台は新宿、主人公のバーテンダー仙田を中心とした短編小説です。新宿裏通りにあるバー「ルヰ」には、表面上は華やかに見えながら、それぞれに事情を抱えた客が訪れます。昭和の古き良き新宿を描いた酒と人情の物語です。この作品を書くきっかけとして、半村自身のバーテンでの経験が映し出されているのは言うまでもありあません。

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まとめ

いかがでしたか?今回は半村良の作品の特徴やおすすめ作品をご紹介しました。半村良はSFや歴史ファンタジーだけではなく、人間模様をテーマにした人情作品も多く執筆しています。今回ご紹介した作品以外にも「かかし長屋」や「忘れ傘」など、人々の暮らしを描いた作品もありますので、SF作品と併せて読んでみると半村良の世界観がより一層楽しめるのではないかと思います。半村作品をまだ読んだことがない方は、ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。

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