小栗虫太郎の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作3選

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1933年、「完全犯罪」で彗星のごとく文壇に現れた探偵小説家・推理小説家の小栗虫太郎。翌年、大作「黒死館殺人事件」を発表します。また数年後、直木賞候補に選ばれるという快挙を成し遂げます。その後は執筆を続け、若くして享年44歳でこの世を去りました。小栗の人生の前半は、執筆業とは無縁の生活を送っていました。人生の後半は、「水を得た魚」のように過ごしていたように考えられます。

その時代、様々な書籍からの引用や邦訳した書物のようなカタカナルビの作中への多用は斬新でした。今なお、読者を惹きつける「小栗ワールド」の作品とその特徴を紹介します。

作品の特徴及び評価


彼の作品の特徴は、博学を活かして作品中に様々な書籍の引用がみられることです。また、カタカナルビの多用も挙げられます。作品の頻繁に用いたモチーフは、犯罪学、心理学、異国趣味、神秘学、フロイディズムなど多岐の分野にわたります。

探偵小説として小栗の作品を捉えると様々な非現実性が際立ちます。例えば、舞台設定、登場人物の設定や言動、トリック、そして推理に置いて、現実離れした独特の作風を作り上げています。日下三蔵の言葉を借りれば、「現実世界に即した論理ではなく、著者が構築した「小栗宇宙」の内部での論理を楽しむべき作品」。一見難解な文章も、「小栗ワールド」に慣れてしまえば一層彼の作品を楽しめるでしょう。

小栗虫太郎のおすすめ代表作3選

おすすめの小栗虫太郎の代表作3本を紹介します。

完全犯罪

1933年7月号の「新青年」に横溝正史のピンチヒッターとして掲載されたのが「完全犯罪」です。それが小栗の作家デビューとなりました。当時、横溝正史の作品を記載する予定でしたが、結核の状態が悪化した為不可能となりました。そこで、白羽の矢が当たったのが小栗虫太郎でした。

あらすじ

完全犯罪は、密室を舞台にした「密室殺人事件」の話です。
時代は、193x年中国ソビエト共和国西域軍が、四川省から湖南省西端八寨へ侵入。その軍の指揮官、ワシリー・ザロフは厳格で軍規をとても重んじていました。その一方で、兵士の性的欲求不満を解消するために娼婦を軍に同行させていました。ザロフは、司令部を八寨のエリザベス・ローレル英国人女医の館に置くことに決めました。そこで事件が発生します。ある朝、ポーランド人ヘッダ・ニュへレッツが変死体として発見されます。出入り口が一つしかない彼女の部屋で何が起こったのでしょうか。

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黒死館殺人事件

1934年「新青年」4月号から12月号に記載された作品です。そして、日本探偵小説において三大奇書のひとつに数えられます。三大奇書には夢野久作「ドグラ・マグラ」、中井英夫「虚無への供物」が名を連ねています。江戸川乱歩はその小説について、「この一作によって世界の探偵小説を打ち切ろうとしたのではないかと思われるほど悽愴なる気迫がこもっている」と残しています。物語のあらすじは、名探偵が大邸宅で次々と起こる殺人事件を解決していく話です。そこに難解な文章や邦訳した文章のようにルビをふったりなど小栗の世界を展開しています。

あらすじ

降矢木家の大城館、通称「黒死館」で繰り広げられる殺人事件に名探偵「法水麟太郎」が挑む話です。弦楽四重奏の演奏者の一人、ダンネベルク婦人が毒殺されることから話が始まります。事件を調べていくと過去に3度も変死事件があったことが明るみに出ます。降矢木の算哲が、生前に4人の西洋人を養子入籍し、そして遺産相続権を残したことが判明します。彼の息子と4人の西洋人は遺言状の各自に対する内容を知る条件として、他人については言及しないと約束させられた為、遺言状の全体の内容を知りません。その遺言状を巡って物語は展開していきます。

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人外魔境

1939年から1941年まで、雑誌「新青年」に記載された秘境探偵小説シリーズの連作です。小栗の没後、1968年桃源社が「大ロマンの復活」シリーズの1冊に「人外魔境」を発行しました。それによって小栗作品の再評価のきっかけになりました。日本人探家、折竹孫七の回想を小説家の「私」がまとめたものというスタイルをとっています。折竹孫七は世界の人跡未踏の魔境に挑み続けてきた大変勇敢な探検家です。そして、なおかつスパイという人物設定です。その為、「人外魔境」シリーズは、探偵小説でありながらスパイ小説的な要素を含んでいます。

あらすじ

舞台は、中央アフリカコンゴ北東、ナイル川の水源地帯。別名「悪魔の尿溜」。日系混血の精神科医・座間七尾の研究所でアメリカ人の密猟者カークは、「悪魔の尿溜」で捕獲したという「有尾人」を動物学者アッコルティに披露します。アッコルティは、その動物は人間とチンパンジーの雑交児かまたは、原人ではないかと見立てます。ひょんなことから精神科医の座間と密猟者のカークは「悪魔の尿溜」への探検を実行します。その探検の先には、何が待っていたのでしょうか。

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まとめ

これらの本を読んで小栗虫太郎の独特な世界観を堪能してみてください。

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>>小栗虫太郎ってどんな人?その生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

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