泉鏡花の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作7選

出典:[amazon]決定版 泉鏡花全集 日本文学名作全集

『高野聖』で知られる泉鏡花は、明治後期から昭和初期まで活躍した小説家で、繊細で写実的な描写が美しく、幻想文学の先駆者といわれています。江戸文芸の影響を受けており、幻想的・怪奇的な作品が多いですが、人情や社会、芸術を特徴とした作品もあります。『滝の白糸』、『日本橋』、『夜叉ヶ池』、『陽炎座』、『外科室』は映画化もされており、水木しげるが泉鏡花の人生を書き下ろした漫画や『高野聖』・『夜叉ヶ池』といった作品も漫画化されるなど、現代でもなお親しまれている作家です。
今回は、泉鏡花の作品の特徴や評価、おすすめ作品7選をご紹介します。

作品の特徴や評価は?

泉鏡花は幻想文学の先駆者とよばれ、独特な世界観のもと、高い表現力や繊細な描写が特徴でした。幻想文学とは、非現実的な本来ありえないこと、怪異や驚異などの架空の話を扱う文学です。
鏡花の作品は、怪奇的なものが多いですが、社会に疑問を呈する観念小説でデビューしたこともあり、社会の価値観を問うものや人情もの、芸術性の強いものなどさまざまな作品があります。また同時代の他の作家とは一線を画した、江戸文学を継承した最後の作家とみる見方もあります。

泉鏡花おすすめ代表作7選

泉鏡花の代表作をご紹介します。彼の独特な世界観が魅力的な作品ばかりですので、ぜひ読んでみてください。

『高野聖』

鏡花の代表作であり、日本においても幻想・怪奇小説の金字塔となっている作品です。
一人旅の主人公「私」が、高野山の大和尚「宋朝」に旅の同行を頼み、成り行きで同じ宿に泊まることになります。その際に大和尚が不可思議な出来事の体験を語るという話です。語りの重層化により幻想性が増している点も文学的に優れており、物語のおもしろさや表現の豊かさも特徴です。

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『外科室』

泉鏡花の初期の作品で、独特のロマンティシズムが見られます。
画家である主人公が、医者の友人の手術を見学することになりますが、患者である夫人が麻酔を受け付けようとしません。夫人が言うことには、心に秘密があるので麻酔をうけてしまうとそれを喋ってしまうので拒否しているとのこと。その秘密の内容が気になる話です。

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『夜行巡査』

こちらも泉鏡花の初期の代表作です。社会的な主義主張の強い「観念小説」ともいわれており、この小説では「仁」や愛、思いやりがテーマとされています。
人間味が乏しく規律を重んじる八田義延という巡査とお香という女の悲しい恋の物語で、お香は親代わりである伯父に恋愛を邪魔されています。
この3人の人物を中心に、規則に縛られた八田巡査の行動と「仁」という観念を通して作者の主張が読み取れる作品です。

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『歌行燈』

泉鏡花が愛した能が関わっている物語です。
勘当された主人公である恩地喜多八と叔父である恩地源三郎の再会をお三重という芸者がつなぐ話です。能楽が主軸であり、喜多八という名前が二人登場するのでやや難しいと言われていますが、美しい描写やテンポの良さも感じられる作品です。

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『春昼』・『春昼後刻』

『春昼』は怪奇的な作品で、逗子を舞台に「厭な心持」のする春の昼に主人公が奇妙な話をききます。そして続編の『春昼後刻』は、奇妙な話を聞き終えた主人公が、うわさの女と出会うところからはじまります。物語を通して「〇△□」という謎の記号がでてきたり、死者が出たりと独特な世界に引き込まれる作品です。

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『婦系図』

義理人情を軸に、個人主義を標榜する主人公と家族主義を標榜する河野家との対立が描かれています。登場人物の秘密が次々と明かされていき、伏線が回収されていく娯楽小説のかたちをとっており、映像化や舞台化が多い小説でもあります。皆既日食とともに描かれるラストが衝撃的です。

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また、この作品は尾崎紅葉の『金色夜叉』を意識して書かれているとも言われ、作中の師匠と弟子の関係が紅葉と鏡花を表しているかのような深い読み方も楽しめます。『金色夜叉』と読み比べてみるのもいいかもしれません。

『夜叉ヶ池』

日本各地の伝承として残されている龍神の言い伝えと干ばつや増水のときの人身御供の逸話を近現代の農村を舞台に描いた作品で、社会的な伝統や義理に阻まれている2つの恋を通して描いています。主人公は、日に3回鐘をつくことで池の龍神から村を守っている男で、村一番の美人お百合と暮らしていました。龍神である白雪も恋をしていますが、恋しい相手に会うには辺り一帯を川に変えなければならない。そんな中、お百合を生け贄にしようと村人がやってきて・・・。

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まとめ

いかがでしたか?今回は泉鏡花のおすすめ作品を7つご紹介しました。泉鏡花の作品は、幻想文学というだけあって、不思議なベールで包まれているような感覚もありながら、設定やテーマ、ストーリーもおもしろく引き込まれる魅力があります。映画化されている作品も多いので気軽に楽しんだり、繊細な表現や江戸文学の要素、芸術の要素などを文学的に楽しんでみるのもいいかもしれません。

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>>泉鏡花ってどんな人?その生涯や性格は?家族は?性格を物語るエピソードや死因は?

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