遠藤周作の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作7選

出典:[amazon]遠藤周作『沈黙』作品論集 (近代文学作品論集成 (20))

遠藤周作は「第三の新人」と呼ばれる世代に活躍し、文化勲章や芥川賞など数々の賞を受賞した、昭和・平成時代を代表とする作家です。周作は12歳で洗礼を受けキリスト教徒になり、日本社会で生きることへの葛藤やフランス・エルサレムなど海外に渡ったこと、度重なる闘病などさまざまな経験を重ねました。これらの経験をベースにした周作の作品は、人間の本質に切り込む深く重いものが有名です。一方、ユーモアのある「狐狸庵山人」として書かれた随筆や歴史小説、戯曲、ミステリーなどもあり、作品は多岐に渡ります。
今回は遠藤周作の作品の評価やおすすめ代表作をご紹介します。

作品の特徴及び評価

遠藤周作といえば、日本の精神風土とキリスト教の問題を追求し続け、キリスト教をテーマにした純文学が有名です。「白い人」「沈黙」を原点とし「死海のほとり」、「イエスの生涯」、「キリストの誕生」、「深い河」がキリスト教をテーマにした作品群と呼ばれています。しかし、キリスト教に関してだけでなく、歴史小説やエッセイ、戯曲、ミステリー、短編小説など作風の幅は広く、膨大な数の作品があることも特徴です。
遠藤周作の作品は、1955年に「白い人」で芥川賞を受賞してから、数々の賞を獲得し、外国語に翻訳されたり、映画化・ドラマ化されたりしています。書籍も今なお売れ続けているので、世代を超えて読み継がれている魅力があるのでしょう。

遠藤周作おすすめ代表作7選

遠藤周作の作品は、純文学からエッセイ、歴史小説など多岐にわたり、受賞作も多いため、どれを読むか迷ってしまうかもしれません。おすすめを紹介しますので、気になるものから読んでみてください。

沈黙

遠藤周作の代表作で、今なお多くの人の心をつかんでいる作品といえば『沈黙』でしょう。この作品は、島原の乱後のキリシタンに対する厳しい迫害が行われた時代の話で、布教をしに日本にきた若い宣教師の葛藤・苦闘が描かれています。長崎奉行所に捕まり、棄教するように拷問され、踏み絵を強要された宣教師。どうしてイエスは沈黙するのか、神とは、信仰とは何か、衝撃とともに考えさせられる作品です。
「沈黙」は、谷崎潤一郎賞を受賞したほか、20カ国以上で翻訳され、映画やオペラになるなど世界中で読み継がれています。2016年にもハリウッドで映画化されました。

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海と毒薬

太平洋戦争のときにおこった九州大学生解剖事件を題材に書かれた衝撃作です。米軍捕虜の人体実験に加担してしまう医学生や看護婦が極限状態の中で押し流されてしまう心の弱さや怖さが描かれています。心を抉られ、考えさせられる作品です。新潮社文学賞や毎日出版文化賞を受賞しました。

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深い河

「深い河」は毎日芸術賞を受賞した遠藤周作70歳の作品で、祈りの物語の集大成ともいえます。遠藤周作が終生取り組んできた、キリスト教と日本人の精神世界の関係を越え、人間の祈りとは何かを直接読者に語りかける作品です。主人公磯辺は妻に先立たれ、インドへと向かいます。時を同じくして様々な思いや業を背負う、磯辺を含む5人がインドへ向かい、たどり着いたのがガンジス川でした。1995年に映画化されたこの作品は、歌手の宇多田ヒカルも影響を受け「Deep River」という楽曲につながりました。

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イエスの生涯

キリスト教徒である遠藤周作がエルサレムを巡礼し、聖書や後世の研究を含むさまざまな書物からイエスの生涯を再構成したエッセイで、イエスの生涯がいきいきと描かれています。聖書にある奇跡の数々をみせるのではなく、人間としてのイエスが描き出されている作品で、国際ダグ・ハマーショルド賞を受賞しました。

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この「侍」は、江戸時代初期に、伊達政宗の命により渡欧した支倉常長がモデルです。ローマ法王への新書を携えて海を渡り、侍として主君の命に従い生きる常長の姿とキリストを主とする神父のやりとりを通じて、キリスト教と日本人の精神風土の関係を強く感じる作品となっています。野間文芸賞を受賞しています。

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白い人・黄色い人

「白い人」は遠藤周作デビュー2作目で、1955年に芥川賞を受賞した作品です。第二次世界大戦中のフランスを舞台に、祖国を裏切ってナチスの秘密警察に入隊したフランス人が主人公です。主人公は神学校時代の友人を拷問にかけます。極限状態における人間の悪魔性と祈りが生々しく描かれています。

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狐狸庵閑話

キリスト教を主題とした作品とは打って変わって、ユニークなユーモアあふれる作品です。自称風流な世捨て人「狐狸庵山人」は、ぐーたらで好奇心が強く、珍騒動を巻き起こす人物です。やや下世話な話もありますが、軽妙洒脱な文体と季節のうつろいや人間に対する深い洞察や観察眼が魅力で、遠藤周作の違う一面を見られる作品です。

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まとめ

ここでは紹介しきれないほど、多くの魅力的な作品を残した遠藤周作。自身がキリスト教徒であることや日本の精神風土との葛藤、海外への渡航、闘病などから生み出された作品は心に響くものばかりです。短編集やエッセイなど重くないテーマの作品もありますので、気になる作品から遠藤周作の世界をのぞいてみてはいかがでしょうか?

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