陳舜臣の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作7選

出典:[amazon]文化の源流シルクロード

陳舜臣は大正時代に生まれ、90歳という人生の中で数多くの著作を残し数々の賞を受賞した作家です。日本における中国歴史小説の大家としても有名で、ひたむきに執筆に向き合ってきた人物でもあります。今回は陳舜臣の作品の特徴や評価をご紹介します。

陳舜臣の作品の特徴や評価

ここでは陳舜臣の作品の特徴や評価についてお伝えします。

陳舜臣の作品の特徴

陳舜臣の作品は、小説から、歴史小説、ミステリーから中国史、インド史、東洋史、評論、随筆など幅広く数も膨大です。作家活動の初期はミステリーが中心でしたが、次第に中国の歴史をテーマにしたものが多くなり、中国歴史小説の第一人者と言われています。

陳舜臣の作品の評価

陳舜臣は1961年の処女作『枯れ草の根』が江戸川乱歩賞を受賞したことに始まり、数々の賞を受賞しました。
『青玉獅子香炉』は1968年に直木賞、1970年には『玉嶺よふたたび』『孔雀の道』が日本推理作家協会賞を受賞し、80年代にも日本翻訳文化賞や読売文学賞随筆紀行賞、90年代には吉川英治賞、朝日賞、日本芸術院賞などを獲得しました。亡くなったのちも大阪芸術賞や勲三等瑞宝章、従四位が授与され、数々の賞を受賞したことがわかります。

また琉球王国の歴史物語である『琉球の風』はNHK大河ドラマの原作にもなっており、NHKのシルクロード関連番組に出演するなどテレビ関係でも評価が高かったことが伺えます。

陳舜臣おすすめ代表作7選

陳舜臣の作品は膨大な数に及びますが、ここでは歴史物を中心におすすめ代表作をご紹介します。

小説十八史略

神々の時代から13世紀の南宋が滅亡するまでの中国の歴史をまとめたもので、中国の各時代の正史の抜粋を中心にした中国の「十八史略」を、陳舜臣が小説として読みやすく書き上げたものです。中国史をわかりやすく俯瞰的に見るのには適していますし、小説ではありながら史実から大幅にずれていることもないので、入門書としてもいいかもしれません。全6冊もあるので、読み通すのは大変かもしれませんが、挑戦してみる価値はあります。

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諸葛孔明(上・下)

人間らしい諸葛孔明の姿が幼少期から描かれています。諸葛孔明が幼少の頃に頼った叔父の諸葛玄から話が始まり、蜀や漢の成立、赤壁の戦い、魏への北伐、五丈原での孔明最後の戦いまでが綴られています。有名な三国志の話でありながら淡々と語られていき、終盤に近づくにつれて、苦悩しながら戦う姿が物悲しくも感じられます。諸葛孔明の人間らしい姿や幼少期の話が語られる本はそれほど多くはないので、諸葛孔明ならすでに知っているという方も楽しめる作品です。

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曹操(上・下)

三国志の世界を曹操の目線から見ており、曹操の一生や考え方や生き方がよくわかる作品です。他の三国志本ではあまり登場しない仏教の観点が出てくる、逆に戦いのシーンが少ないなどが特徴です。悪役として描かれることの多い曹操ですが、この作品では物事を合理的に柔軟に考える人物であり、詩人としても描かれています。また匈奴人やソグド人、仏教徒などさまざまな勢力が登場し影響を与えるなど社会情勢を含めて書かれているのも三国志の理解を深めるのに良いですね。『諸葛孔明』と合わせて読むと、両者の視点から見られて面白いかもしれません。

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実録アヘン戦争

アヘン戦争について詳しく知るにはぴったりの一冊です。アヘン戦争が東洋と西洋の遭遇であると捉えることから始まり、時代背景から人物、思想、経済貿易。実際の戦争の経緯など詳しく史料に基づき淡々と書かれています。陳舜臣は1967年に小説『阿片戦争』を書いていますが、1971年に出版された『実録アヘン戦争』に「それからの林則徐」という評論が追加されているのが本書です。林則徐は清朝の高官で、イギリスと中国のアヘンに関わる人々に挑んだ人物です。アヘン戦争について理解を深められること間違いなしです。

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耶律素材(上・下)

モンゴル帝国初期の官僚である耶律素材が主人公の小説で、陳舜臣は耶律素材は諸葛孔明に匹敵する功績を残していると捉えています。当初は金王朝に仕えていた耶律家でしたが、チンギス・ハーンに金王朝が服従すると、チンギス・ハーンに仕えるようになり、西のホラズムを征服するなどの活躍をします。さらにチンギス・ハーンの死に際し、帝国の制度構築を託され、2代目オゴデイのもとでも尽力します。
モンゴル帝国の話といえば、チンギス・ハーンが中心に描かれることが多い中で、裏側から見ているような感覚が新鮮で楽しめる作品です。

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琉球の風

17世紀の琉球王国が舞台の歴史小説で、1993年にはNHKの大河ドラマにもなっています。当時の琉球は中国・明の冊封を受けつつも、鹿児島の薩摩藩との貿易も行っていました。明の衰退や薩摩藩、幕府、東アジアを狙うスペインやオランダなどの複雑な関係も背景にありながら、平和な国であった琉球が、外敵に侵攻されていく中でどのように立ち回るのかなどから目が離せない話になっています。
また、当時の琉球の文化や暮らしなどが見える記述が多く、沖縄について改めて考える機会を与えてくれる作品です。

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対談 中国を考える

同郷の友人である陳舜臣と司馬遼太郎が70年代に行った対談です。中国・インド・モンゴルについて深い知見を持った2人の対談で、豊富な知識と実際に足を運んだ体験から、周辺の民族や宗教、歴史的背景などさまざまな角度から対談しています。関西弁というのがまた魅力です。

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まとめ

いかがでしたか?陳舜臣は歴史小説でありながらしっかり史料にも当たっているので
歴史の入門書としても読みやすいと評判の作品が数多くあります。一度読み始めたら、中国などの歴史にはまってしまうかもしれませんね。これを機にぜひ手にとってみてください。

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>>陳舜臣ってどんな人?その生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

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