安部公房の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作7選

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安部公房は第二次戦後派と呼ばれる作家で、戦後日本の文学や戯曲、ドラマなどを牽引した人物でした。「急死しなければノーベル文学賞を受賞していたでしょう」と言われるほど、国内外から高い評価を受けており、その作品は小説、戯曲、エッセイなど多岐にわたり、演出やスタジオの創立など多方面で活躍しました。安部公房の作品はかなり数が多く、読みたくてもどれから読めばいいか迷ってしまう人もいるでしょう。この記事では、安部公房の作品の評価やおすすめ作品をご紹介しますので、作品を選ぶ際にお役立てください。

安部公房の作品の特徴や評価

安部公房の作品の特徴は「シュルレアリズム」や「アヴァンギャルド(前衛的・革新的)」、「不条理」などと評されることが多く、ブラックユーモアのきいた難解な作品も多いですが、芥川賞ほか数々の賞を受賞しています。外国語に翻訳された作品や、映画・ドラマ化された作品も多く、高い評価がうかがえます。安部公房は大学時代に数学の天才と呼ばれたほどだったため、物語の設定などに数学の下地が見られることも、他に類をみない特徴といえます。

また『砂の女』『他人の顔』『燃え尽きた地図』の3作は、登場人物が社会から失踪し、自分自身のアイデンティティを見失っていくところが共通しているため「失踪三部作」と読者から呼ばれています。

安部公房のおすすめ代表作7選

ここからは、安部公房の代表作をご紹介します。どの作品も安部公房の独特な世界観が味わえるものですので、ぜひチェックしてみてください。

砂の女

『砂の女』は、ファンの間で「失踪三部作」と呼ばれる作品の1作目で、読売文学賞小説賞を受賞し、20カ国以上の言語に翻訳され、フランス最優秀外国文学賞を受賞した作品です。勅使河原宏監督により映画化され、カンヌ国際映画祭では審査員特別賞を受賞、さらにアカデミー賞にもノミネートされました。

話の内容は、砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂に埋もれていく家に閉じ込められます。男を引き留めようとする女と男の脱出を妨害する村の人々。家にいた女とのやりとりや男の心情の変化が描かれており、サスペンス的な要素や不条理さが感じられ、人間存在について考えてしまうような作品です。

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他人の顔

『他人の顔』は、失踪三部作のひとつで、液体空気の爆発で顔が一面ケロイドになり顔を喪失してしまった男が、失われた妻の愛を取り戻すために、他人の顔をプラスチック製の仮面に仕立てて妻を誘惑しようとあがく姿の物語です。科学的な記載も交えながら、顔というものに関わって生きる人間存在の不安定さがみえてきます。

燃え尽きた地図

失踪三部作のひとつといわれる長編名作です。主人公の興信所員の僕は、1年半前に失踪した夫の行方が知りたいという女の依頼から、調査を進めるていくうちに手がかりを失っていき、次第に自分を見失っていく、大都会の孤独と不安が鮮明に描かれています。物語が錯綜し、難解な部分や様々な解釈が考えられる展開など読みごたえのあるじっくり味わいたい作品です。

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『壁』は、川端康成にも高い評価を受けた芥川賞受賞作品です。ある朝、自分の名前がなくなっていた男のユニークで奇妙な物語です。名前を失ったことで、男は現実が不条理なものとなり、他人との接触に支障をきたすようになります。孤独な男の姿から人間の実存的な体験を描き、価値の逆転を試みた作品です。

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友達・棒になった男

『友達』は三島由紀夫から高い評価を受けた、谷崎潤一郎賞を受賞した作品です。人と人とのつながりを大切にしようとする親切心から、孤独の価値を奪ってしまうことがブラックユーモアで書かれています。

『棒になった男』は、戯曲「鞄」「時の壁」「棒になった男」の3つの演目から構成されている作品で、子どもとデパートにきた男性が屋上から落下し、着地した頃には姿が「棒」に変わってしまったところからはじまります。「他人から使用される事でしか存在理由を持たない、棒のような男」とあるように、人間存在の不確かさが現れています。

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笑う月

安部公房が見た「夢」に関して書かれたノートをまとめた随筆集です。ユーモアとアイロニー、恐怖が入り交じっており、特に安部公房が恐怖を抱いていた「笑う月」がタイトルになっています。安部公房の頭のなかが見られる短編集で、夢と現実を行き来するような不思議な雰囲気が漂っています。

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水中都市・デンドロカカリヤ

ある日突然現れた父親と名乗る男が、奇怪な魚になり、町そのものが水中の世界へと変わっていく「水中都市」や、主人公が植物になってしまう「デンドロカカリヤ」、『友達』の原型となった「闇入者」などの安部公房初期の短編集です。短編作品の頂点ともいわれています。

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まとめ

安部公房の作品は小説やエッセイ、戯曲など様々な作品があり、シュルレアリズムを特徴とする、常識では考えられない不安定さや不条理さ、ユーモア、暗さ、難解さなどが独特で、それが魅力ともいえる作品ばかりです。代表作や映画化された作品、短編など、気になる作品から安部公房の世界に入ってみてはいかがでしょうか?

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